2010年のフリーゲーム雑感
・MMF2躍進の年
昨年末に日本語版が発売されたオーサリングソフト「MultiMedia Fusion 2」を使用したゲームが目立った印象がある。
『そらみちゃんGOGO!』、
『アンブレード戦記』、
『Star Shooter Maximum 2010』、
『GIGADEEP』など。
そうしたMMF2製ゲームの中でも白眉は『テレポー塔』と
『UOP 〜うっておとしてポン!〜』の2本。
小粒でアイデアに優れた、this is freegameな作品。
・アクション
影絵の男を操る『Charlotte』がギミック、雰囲気共に素晴らしい。
開発チームの解散が悔やまれるが、後で調べたら学生作品で日本ゲーム大賞2010のアマチュア部門受賞作だったとか。
白黒無重力メトロイドな『Hero Core』は『Iji』を作ったRemar Gamesらしい密度の濃さ。
とりわけ対ボス戦が熱かった作品。Coreなゲームをプレイしたい向きに。
『かえらずのもり』は見た目がファミコン風だが難易度もファミコン級でギブアップ。
『Wired Butterfly』マニアックな話をさせていただくと、初期版のスクロール速度の方が好みでした。
本作の次でアバラヤさんちが有料アダルト方面に行ってしまったのが、追っ掛けとしては少々複雑な気分。
・パズル
ステージを折り畳むプラットフォームパズル『Paper Cakes』と、
物理演算とハサミを組み合わせた『Cut It!』は特筆もの。
発想にただただ脱帽するばかりでコメントに詰まる。
・シューティング
17年越しのリメイクとなった『NyaHaX 2010』。
NyaHaX'93をベースに、中型機などの新要素を取り入れつつフィーバー感増量、
ボスラッシュ突入時のまさかのCaraX'92アレンジに全俺が泣いた。
自分のようなジジイよりも若人にプレイしてもらって、さらにもう17年語り継がれてくれることを願うばかりです。
シューティング+『cursor*10』な、過去の自分と共闘する『HISTORICA』もアイデア賞もの。
話によるともともとはコミックマーケットで領分されたものらしい。
一方、各所で話題となった『Hydorah』はのめり込めず。
自分が80年代STGにあまり思い入れがないと言えばそこまでなのだろうけど、
”戻り復活”をはじめとする古臭い部分がストレスにしかならなかった。
・RPG
『REVIVAL-LEGEND』は非ツクールであるというその1点だけでも評価に値する。
物語中に登場するペンダントがストーリー上のキーアイテムというだけでなく、
プレイヤーが操作する戦闘シーンにおいても重要な役割を果たす、という点が良く練られていて好感触。
とりわけSFC時代のJRPGが好きな人に薦めたい。
また、同サークルのシミュレーションRPG『ドラマチックロード 二輪部の挑戦』もフリー化されている。
日本で2番目にドラマチックロードをやりこんだ男(※1番目はこの人)として言わせてもらえば、
思い出したようにプレイしたくなる、どれだけ年月を経ても色褪せない魅力を持っている、そんな作品。
・FPS
二次創作作品ふたつ。
ロックマン(Mega Man)をFPS化した『Mega Man 8-Bit DeathMatch』。
ゲーム自体はDOOM MODなので言うことなし。ファミコン版のみならず、X、Z、EXE他の
ロックマンシリーズを網羅した”ロックマンVSロックマン”みたいなの作ってくれませんかね、カプコンさん。
FPSジャンルへのカテゴライズが若干ためらわれる『HIGH-MACS simulator』。
原作であるセガサターン版ガングリフォンの味を”判っている”バカタレ共に恵まれたようでなによりである。
(そのバカタレ共の内にウチの兄貴も含まれているのが流石というか…)
・ノベル
普段はノベルなど脇目も振らない人間が、今年はなんと2本も手を出しているという驚異的な事態。
ひとつは『無限夜行』。イラストで一目惚れ。
ストーリーもただのノスタルジアに終わらない不思議な読後感をもたらしてくれた。
もうひとつは「明日死ぬわたしに、今日、友達ができました」というキャッチコピーも衝撃的な『ユーマを抱きしめて』。
イラストSNS「Pixiv」を通して開発スタッフが集まった、という話をインタビューで読んで興味を持った。
新しい才能にはいつだって敬意を持って接したいものです。
グダグダ書いてきたが、まとめると
技能賞:『Hero Core』
殊勲賞:『Charlotte』
敢闘賞:『ユーマを抱きしめて』
大賞:『テレポー塔』
こんな感じです。
でまあ、2010年は新作フリーゲームをあまり遊んでいないなーという印象があるのだけど、
実際のところ、今年一番遊んだフリーゲームは初出が去年の『ヴァンガードプリンセス』だったりする。
折角なのでヴァンプリについても書いておこう。
ヴァンプリをプレイしていた理由は、友人から対戦を誘われたのが半分で、
魔王14歳が「フリーゲーム」としての在り方を問う文面をいくつか書いていて、それに疑念を抱いたのがもう半分。
その疑念に答えを出すためにコントローラを握っていたように思う。
ヴァンプリは本当に「フリーゲーム」足りえない、安易に商業ゲームの方向性を目指した作品なのか?と。
敢えて言わせてもらえば、否、だ。
ストリートファイターでもキングオブファイターズでもブレイブルーでもアルカナハートでもない
ヴァンプリ独自の方向性、アイデア、哲学、というものは確かに存在し、内包されている。
少し踏み込むと、その最もたる部分が「サポート」のシステムであり、
「サポート攻撃はサポート防御(プロクシガード)で防ぐことができる」という点にある。
サポートシステムは、実質的に「任意選択可能なもう1つの必殺技」でしかなかった
従来の格闘ゲームにあった援護攻撃システムとは異なる、駆け引きの”平列化”を生んでいる。
”相手を攻めながらガードする”という、一見矛盾をはらんでいるように聞こえる行動が
ヴァンプリのゲーム画面上では易々と成立するのである。
ヴァンガードプリンセスのサポートを絡めた駆け引きについては、こちらで文章化している。
これだけのことをまとめるのに1年を費やしたというのは時間が掛かりすぎだし、
1年間の戦いの成果としてはお粗末な代物かも知れないが、
格闘ゲームが特別得意なわけではない自分でもこれくらいのことは判る。
また同時にヴァンプリという作品が、異様にマニアックな駆け引きを要求する難物である、とも感じている。
所詮”コンボゲー”の方が、自分のやるべきことは遥かに判りやすい。コンボを叩き込めばよいのだから。
ヴァンプリは、そうではなかったのだ。
ヴァンプリという作品がステレオタイプな「全キャラクターが美少女」の「2D対戦格闘ゲーム」だという側面はあるにせよ、
それは所詮見た目の問題でしかない。
「商業レベル」「ハイクオリティ」「無料」そんな曖昧で実利的な言葉ばかりが並べ立てられ、
商業ゲームの代替物のように扱われるのも、それを受けて作品を鼻つまみにするのも、クソクラエだ。
非公式ネットワーク対戦ツール『LunaPort』が作られた意義を問う声がなぜ現れないのだろうか?
「対戦格闘ゲームとしてのヴァンガードプリンセス」が取り上げられる日はいつ来るのだろうか?
問題はゲームではなく、ゲームの語られ方にある。
「商業ゲームにない独自表現こそがフリーゲームの本懐である」とするならば、
そこに込められたものこそを読み解かなければならない。
作品は読み解かれず、ただ消費される。
「ネットワーク対戦が可能な格闘ゲーム」を薦めてくれ、と問われれば、
僕は迷うことなくストリートファイター4を薦めるだろう。
ヴァンプリがゲームとしての創意工夫を止め、キャラクターを愛でるだけの安易な代物に成り下がるのであれば、
僕はアルカナハート3をやるだろう。
僕がこれからもヴァンガードプリンセスをプレイするであろう理由は、それがヴァンガードプリンセスだからだ。
ヴァンプリが唯一無二の「フリーゲーム」であるからだ。
ヴァンガードプリンセスにしかないものを信じて疑わないからだ。